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院長ブログ・お知らせ

精液検査の基準値が11年ぶりに改訂されました

精液検査

不妊治療をされているご夫婦が増え続ける中、年々男性の精子にも注目が集まっています。

卵子だけでは当然妊娠できません。

そこに質の良い精子がいることがとても大切なのです。

この40年で世界中の男性の精子数が半減していると言われています。

不妊治療をされているご夫婦が増えている背景には晩婚化というのもありますが、この精子数が半減しているのも大きく関わっているのではと個人的に考えています。

そのような中、今年精液検査のWHO基準値が11年ぶりに改訂されました。

WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th ed

精子濃度と運動率が少し厳しくなった

精液検査のWHO基準値は「1年以内にパートナーが自然妊娠をした男性の精液所見」をもとに作られています。

それらの男性の精液所見を良いものから順番に上から並べ、その下位5%がWHO基準値となっており、自然妊娠が可能な最下限値と言われています。

2010年と2021年の基準値の比較はこちらです。

液量:1.5ml→1.4ml
精子濃度:1500万/ml→1600万/ml
総精子数:3900万→3900万
運動率:40%→42%
前進運動率:32%→30%
正常形態率:4%→4%

精子濃度と運動率が若干上がり、前進運動率が下がりました。

このように厳しくなった部分と緩くなった部分はありますが、覚えておいて欲しいのは、このWHO基準値は「自然妊娠可能な最下限値である」ということです。

ほとんどの病院はこの基準値のままか、そこに少し上乗せさせた程度の所が多いです。

この低めの基準値を越えたからといって

「俺は大丈夫や!」

と油断していてはいけません。

精子はすぐに弱ります。

この研究をご覧ください。

WHO基準値と中央値はかけ離れている

パートナーが自然妊娠した男性(今回のは日本人のみ)792人を対象にしたWHOとは別の調査の結果、精子濃度や運動率の中央値はこのような結果になったそうです。

Iwamoto T,Nozawa S,Yoshiike M,et al:Semen quality of fertile Japanese men:a cross-sectional population-based study of 792 men BMJ Open.2013;3:pii:e002223

精子濃度の中央値:8400万/ml
運動率の中央値:66%

WHO基準値は下位5%を基準にしているのに対して、これは中央値をみています。

果たして基準値を最下限値のものに設定して良いものでしょうか?

私は個人的に少し物足りないのではと考えています。

このような理由から当院の精液検査の基準値は精子濃度8400万/ml、運動率66%としています。

詳しくはこちらから

かなり高めに設定していますが、精液所見は良いに越したことはないので、ここを目指します。

また私が知る限り、精液検査の基準値が厳しい病院の数値は、精子濃度7500万/mlの病院や運動率60%といった病院があります。

精子濃度7500万/mlに設定している病院の看護師長さんや培養室長さんに何故このような高い数値になっているのですかと聞いたところ、「自然妊娠を目指すにはこれぐらいの数値が必要だから」という答えが返って来ました。

ちなみにこの病院はかなりの大手で沢山の実績がある病院です。

なので説得力が増しますね。

このように精子濃度が8400万/mlや7500万/mlという数値とWHO基準値を比較するといかに乖離があるかがわかります。

WHO基準値を全否定するつもりもありませんが、これをなんとかクリアしたぐらいで油断はしないで欲しいということをもう一度言っておきます。

精子の質についての項目が増えた

上記の精子濃度や運動率は見た目上のものとなりますが、精子のDNA断片化率(DNAが壊れていないかどうか)や精液の酸化ストレス検査、精子形態の詳細な検査、遺伝学的な検査など精子の質に対しての記載も増えました。

見た目上で濃度や運動率が良くてもダメで質も大事だよ(当たり前ですが)というWHOからのメッセージだと考えています。

しかしこれらの検査を行う病院は数少ないので、検査結果を知ることが出来る人は限られます。

ではどうしたら良いのか?ということになりますが、精液所見が悪い人ほど射出精子中のDNAの損傷率が高かったという論文があります(Satoru KANEKO : Observation of DNA fragmentation in human sperm and its exclusion from ejaculated human se- men(Department of Obstetrics and Gynecology, Ichikawa General Hospital, Tokyo Dental college)ので、まずは精子濃度や運動率を高めていくと良いのではないでしょうか。

不妊治療中の男性は熱や活性酸素に気をつけて、「俺のみなぎる精子力で妊娠を目指すんや!!」ぐらいの勢いで頑張って欲しいと思います!

五月が丘鍼灸治療院 内名博志


院長顔写真

院長 内名 博志

昭和60年生まれ
明治鍼灸大学(現、明治国際医療大学)卒

日本不妊カウンセリング学会:不妊カウンセラー
一般社団法人JISRAM(日本生殖鍼灸標準化機関):理事

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