着床率を上げるには
妊娠が成立するうえで色々な壁がありますが、その中でも着床の壁というのはとりわけて大きいと感じています。
染色体が正常であっても着床しないことは珍しい事ではないので、着床において受精卵以外の問題も見過ごせません。
今は「着床の窓」の検査であるERAやERpeak、「慢性子宮内膜炎」の検査であるALICEやCD138免疫染色、「子宮内フローラ」の検査であるEMMA、「子宮の異常収縮」を診る検査など着床障害に対する検査は多岐に渡ります(賛否両論あるものもありますが)。
しかしそれらの問題以外でも着床に関わる大事な因子があります。
その中でご自分でできる方法(しかも無料!)としてワンポイントアドバイスを送るとすると、それは
より頻回に精液を子宮内に曝露させること
です。
要はもっと月の夫婦生活の回数を上げましょうということです。
不妊治療をしていると夫婦生活の頻度が下がってくるご夫婦も多いですが、タイミングの方はもちろん(単純に回数が増えるので排卵にあたりやすい)、人工授精の方、ART治療(体外受精や顕微授精)の方にもできるだけ夫婦生活をもって欲しいです。
というのも、受精卵はパートナーのDNAが含まれているので、母体にとって受精卵は異物になるのです。
しかし本来は異物であっても受精卵が排除されない仕組みが整っているのですが、様々な要因で免疫細胞が攻撃的になり、受精卵を攻撃してしまうリスクが増えるのです。
それが子宮内に精液をさらすことで免疫寛容といってそのリスクを軽減させる可能性が報告されています。
J.Reprod.Immunol.85(2):121-129,2010
子宮内に精液をさらすと受け入れやすくなる
この仕組みをざっくり説明すると制御性T細胞(Treg)という免疫細胞が攻撃的な細胞を抑えてくれるので、受精卵が排除されにくくなるといものです。
この制御性T細胞による免疫寛容はマウスで証明されているのですが、ヒトにも制御性T細胞はあるので、ヒトでも似たような効果が期待できるのではと言われています。
私は可能性が1%でも上がるのであればしておいた方が良いと思うので、胚移植を控えている患者さんでも病院が禁止していなかったりホルモン補充での移植の場合は推奨しています(自然周期移植だと多胎の可能性が出てくるので)。
移植周期に避妊をしない性行為を禁止している病院も多々ありますので(感染症による移植キャンセルを防ぐため)、そこは病院の指示にしたがってもらっていますが、可能性が低い感染症を懸念するよりも少しでも着床する可能性を上げる為にも夫婦生活をもっておいた方が良いという医師もいるので、それらの意見を参考に考えられると良いなと思います。
また後々書く予定ですが、別のプラス要素により妊娠率が上がる機序も報告されているので、妊娠・出産を目指すのであれば少しでも多く夫婦生活をもっていただけると良いなと思います。
タイミング法や人工授精の方は排卵日であろうがなかろうがいつでも、胚移植を控えている方は胚移植2日前までぐらいに夫婦生活を1回でも多くもっておいてください!
ただしこれは必須条件ではないので、頻回の夫婦生活が難しい方は無理をし過ぎないように、あくまでも可能性を上げるものだと認識しておいてください。
当院で使用しているスーパーライザーには着床における免疫寛容を期待できると言われているので、頻回の夫婦生活が難しい方はこちらでも対応できます。
不妊治療中は避妊しないといけない時期はないという医師もいますし、夫婦生活自体に心身の安定をはかる効果も期待できます。
タイミング法ができない・苦手だという男性も多々いますが、排卵日関係なく夫婦生活がもてると色々な意味でプラスになるのではないでしょうか^^
五月が丘鍼灸治療院・内名博志
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